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クラウドファンディングでODA予算を調達?SDGsへ向け民間資金を開発資金へ活用

3月 4th, 2019|0 Comments

Sunday, 6 September 2015 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertistクラウドファンディングで開発援助予算を集めるのが良いのでは?外務省の若手担当官と意見交換をする中で出たアイデアだ。日本には寄付文化が根付かない土壌がある。非営利団体へ寄付が集まる欧米と異なり、開発資金を個人から集めることは、日本では容易ではない。しかし、クラウドファンディングはどうだろうか。スタートアップ企業やNGOがインターネットを通じて寄付・投資を募る新しい仕組みで拡大傾向にあり、ネパール緊急支援でも注目された手法だ。 日本の政府開発援助(ODA)を実施する国際協力機構(JICA)も細々と寄付を募っているが、クラウドファンディングで援助資金を調達した例はない。それだけに、実施できればとても面白い。 JICAがクラウドファンディングで案件予算を調達するとどうなるか? JICAが案件を実施する場合、一般的にいくつかのステップがある。 開発途上国政府から要請を取り付ける(分野・内容が細かく記載されている企画書)。 日本政府・JICAで案件審査を行い、採否を決める。 閣議決定。開発途上国政府へ採択通知。 開発途上国政府と合意文書締結。 JICAがクラウドファンディングで直接資金調達をするアイデアは、2と3を省略するもの。一般的に、JICAが実施する無償資金協力・有償資金協力・技術協力は国民の税金を活用するため、2と3で日本政府で慎重な審査が行われる。そのため、このプロセスに数か月から数年要することもあり、特に民間の感覚からは「足が遅い」と揶揄されることも。開発案件は、問題の発言と関係者の熱意がタイムリーに組み合わさることで実現する。刀鍛冶と同じで鉄は熱いうちに打てが鉄則なはずだが。もし、クラウドファンディングでJICAの担当者がプロジェクトをプレゼンし、賛同する日本国民からインターネットを通じて直接案件資金を募ることができれば(税控除対象)、賛同の得られるプロジェクトをより早く実施することができる。日本国民にとって日本の援助は、ODAの資金規模や青年海外協力隊(JOCV)といった大雑把なイメージしかない。クラウドファンディングが実現すれば、国民参加型の案件実施が可能になるのではないだろうか。更に、日本国民に限定する必要はない。クラウドファンディングを通じて全世界から資金を集める。日本の援助のスポンサーを全世界から募る。日本の援助は何をやっているかわからないと言われて久しいが、それならばスポンサーになってもらい、同時に知ってもらう。新しい時代の新しい政府開発援助の在り方ではないだろうか。 Photograph: Ippei Tsuruga 更に、日本国民に限定する必要はない。クラウドファンディングを通じて全世界から資金を集める。日本の援助のスポンサーを全世界から募る。日本の援助は何をやっているかわからないと言われて久しいが、それならばスポンサーになってもらい、同時に知ってもらう。新しい時代の新しい政府開発援助の在り方ではないだろうか。 どのように仕組みを変えるべきか? 案件の採択までのステップを見直す必要がある。要請取り付け(同上)。クラウドファンディングサイトへ案件公開。開発途上国政府と合意文書締結(同上)。クラウドファンディングで資金調達することによって、2と3のステップを飛ばすことが利点と書いた。一方、資金集めを開始する前に、開発途上国政府への説明と事前合意は不可欠。勝手に企画し、資金が集まってから合意を得られないのでは、元も子もない。しかし、「クラウドファンディングなので資金工面でいるかわからないが、集金できたら実施します」といった無責任な説明も開発途上国政府へできないことが悩ましい。開発途上国政府との関係では、案件予算が満額集まらなかった場合は、政府予算で差額を補てんして採択する必要はあるかもしれない。たとえば、小規模案件については採択ステップを緩和し、日本政府・JICAで簡易審査を実施し、全て一旦クラウドファンディングサイトへ掲載。その上で、案件予算に不足が生じた場合は政府予算で補てんして採択する。資金が満額集まった場合だけでなく、集まらなかった場合の「滑り止め」も用意しておく必要がありそうだ。 Photograph: Ippei [...]

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国際協力の資質、開発途上国の援助に必要な専門性とは?

3月 4th, 2019|0 Comments

Tuesday, 11 October 2016 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertist CONTENTS 国際協力に必要なスキルや資質は1つではない 国の専門と地域の専門 二国間援助機関と多国間援助機関で専門性が異なる 専門分野によってアプローチが異なる 国際協力に必要なスキルや資質は1つではない 国際協力を仕事として生きていくためには何が必要ですか?開発途上国の援助のプロになるための資質とは何ですか?これまで、このような質問をたくさん受けてきた。正直なところ、「なんだろう?」と、そのたびに考えさせられるのが本音だ。聞かれるたびに、私の回答が異なるものだから、聞いている方は困ってしまうかもしれない。要するに、決まった答えはないということだと思う。 今、この質問をされれば、こう答えるだろう。必要とされる専門性や資質は、国際協力のどの分野、どの組織で働くかによって変わってくる。 気付けば早いもので、私もNGO、二国間援助機関(JICA)、国際機関(ILO)と渡り歩いてきた。それぞれ全く違う仕事に携わり、全く違うロジックと視点での仕事だった。今日は、私の経験を通じて感じた「感覚的な話」をしたいと思う。これからキャリアを考えている方の役に立てばうれしい。 国の専門と地域の専門 国際協力を生業としようと思い立つときに、何を専門に生きていくべきか考えることとなる。カンボジアやケニアといった個別の国の専門か。アジアやアフリカといった地域の専門か。これほど単純ではないが、今日はこの2つに絞って考えたい。 いろいろな意見があって良いと思うが、私は「国の専門」には懐疑的だ。結局のところ、私たちは、外国人として開発事業に携わるしか残された道はない。どんなに頑張っても、「カンボジアの専門家」を目指したところで、カンボジア人には敵わないからだ。 たしかに、カンボジアに「ほぼ」永住して特定分野の専門性を生かして活躍している人はいる。これは、教育の未発達な国で、その国の事情は知っていても経済・社会・セクター分析をしっかりできる専門家が少ないことが原因だろう。しかし、優秀な現地のプロフェッショナルがいれば、外国人の私たちの役目はなくなる。 「国の専門」が成り立つ条件は、ただ一つしかない。カンボジア人よりもカンボジアについて詳しくなることだ。カンボジア人の中にも地方へ行ったことがなかったりその分野での経験が浅かったりということで、旅費が潤沢に使えたり勉強へ投資できるドナー国の職員にアドバンテージがある。そのため、一時的に「国の専門家」が生まれる。 しかし、より優秀な人材が開発途上国で育ってくることを考えれば、国際協力を生業として生きていく私たちにとって「国の専門」は現実的ではない選択肢だ。 二国間援助機関と多国間援助機関で専門性が異なる [...]

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西洋のYesと日本のYesの違い

3月 4th, 2019|0 Comments

Monday, 1 August 2016 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertist 日本は組織、西洋は個人で仕事をする 開発途上国の援助を生業としていると、否が応でも世界中のプロフェッショナルと仕事をともにすることとなる。その中で日々感じることは、西洋のYesと日本のYesはずいぶん異なるということだ。もちろん一概に西洋とひとくくりにするのは乱暴ではあるが、あくまで私が経験してきた中で感じた「平均」の話である。 会議をセットする場合を考える。日本人の感覚としては、外部の機関と会議をする場合、まず内部の会議で対処方針を固め、組織としてどういう意向を持っているかまとめ上げる。その上で会議へ望み、相手機関に対して意向を伝える。組織対組織の会議が前提だ。 一方、西洋人(少なくとも北米とラテン系)と会議をする場合、驚くことがよくある。テンポよく打ち合わせが進んでいると思って聞いていると、「I(私)」という言葉が必ず出てくる。「私はこう思っている」という言い方をしているわけだ。日本人の感覚としてはありえない。組織のトップでない限り、組織を代表して代弁するのだから「We(私たち)」が主語となる。 ここには大きな隔たりがある。西洋人はあくまで、自分がどう考えているかを伝えることを会議の目的と考えていて、組織の意見は「上の者」が最後にトップ同士で話して決めればいいと考えていることが多い気がする。自分の知らないことに話が及ぶと、「私の担当外なので分からない」と平気な顔で言う。あとで確認して回答するというのであれば話は分かるが、たいていの場合そのあとのフォローはない。組織の代弁者としての責任感はないわけだ。 会議へ望む前の準備状況にも大きな差がある。日本人が内部会議で組織決定を経たうえで発言・応答要領を手に会議へ望むのに対し、西洋人はコーヒーだけ持ってくることが多々ある。西洋人が下っ端の場合、本当に個人の見解を述べるにとどまる。こういう状況の場合、こちらは組織見解を述べているのに、相手は自分の感想を述べる「ブレスト」に終始し、会議のための会議となってしまう。 [...]

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国際協力、復興の狼煙をあげるのは一人のコトバから

3月 4th, 2019|0 Comments

Tuesday, 28 February 2017 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertist  国際協力が落ちぶれないために 実務に携わっている人が自分の言葉で発信しなければ、日本の国際協力業界は落ちぶれていく一方だ。最前線で活躍する個人が発信するようになれば、国際協力への理解は深まり、盛り上がる。ことあるごとに、そんな趣旨のことを書き連ねて久しい。実務に携わっている人の多くは、私的な場で話すとネタが尽きることが無い。留まることを知らないマシンガントークを披露する人がとても多い。それだけ情熱を傾けて仕事をしている。しかし、それが公的な場、とりわけ出版物やインターネット上での発言・発信となると、一気にトーンダウンしてしまう。理由は明確で、公に発信することが追加業務であって、発信しなくてもよいからだ。一方、税金や寄付で成り立っている事業が多い分、公の場で個人が下手な発言をすると組織が叩かれるリスクが極めて高い。そのため、広報・発信に関するガイドラインが団体ごとに整備され、事実上の情報統制が敷かれている状況が国際協力業界全体に蔓延しているのが実態だ。こうした状況下、個人名で発信することは百害あって一利なし。国際協力業界で働く実務家にとってリスクはあれど、メリットは無いわけである。しかし、大本営発表が面白くないのはいつの時代も変わらぬこと。綺麗に整えられた当たり障りの無い文章の羅列が関心を集めることは少ない。日本の国際協力業界の発信力は、このまま地に落ちてしまうのか。そんな危機感を持った私は、JICA職員だった頃にThe Povertistを始めることを思いついた。個人名で発信することのリスクは果てしなく大きく、批判も覚悟の上だった。冷たい視線を感じたことも、ネット上で叩かれたことも、数えきれないほど多い。それでも、少しずつ、少しずつではあるが、実務や研究の第一線で活躍する人が自分の言葉で語り始めるプラットフォームが出来上がりつつある。The Povertistは今、そんな過渡期にある気がする。 Photograph: Ippei [...]

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ナイジェリアでスマートフォンとアプリを使った汚職防止策が効果

3月 4th, 2019|0 Comments

 Wednesday, 19 October 2016 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertist ナイジェリアの運送業者はチェックポイントでたびたび止められることに悩んでいる。こうしたチェックポイントの多くは、違法に設置され、ドライバーから違法に現金を徴収する。ドイツの援助機関GIZの2012年の調査によれば、運送業者の約60%が、一度の輸送で3~5回の違法なチェックポイントを通過している。違法に徴収される料金は一日の稼ぎを超えることもあるが、断ると暴力の脅威にさらされるという。こうした状況に対応すべく開発されたのが、スマートフォンアプリ『Trade Route Incident Mapping System(TRIMS)』。アプリを通じて、運送業者は匿名でこうした違法行為を報告することができる。送信された情報は、TRIMSのシステムで一元管理され、誰もが地図上で確認することができるようになる。2014年に始まったこのプロジェクト。既に2,000件以上の事案が報告されている。アプリを通じて情報が拡散されるため、汚職防止へ向けた注意喚起が期待できるという。情報通信技術(ICT)を活用した汚職防止策にますます注目が集まりそうだ。外部リンク Nigeria: using an [...]

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途上国の災害緊急援助をAmazonで注文・配送したらどうなるか?

3月 4th, 2019|0 Comments

Thursday, 18 August 2016 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertist Amazonが自社専用の貨物機を導入 「Amazonがついに自社専用の貨物機を導入して運用を開始」というニュースを目にしました。同社はすでに「自社専用の輸送機20機のリース契約を結んだ」様子。ロジスティックスを一元管理することで、コスト削減と配送スピードを改善することが狙いと報じられています。ただ、Amazonがロジスティックスを一元管理することになると、「効率化」だけでなく、いろいろな新しい可能性が頭をよぎります。特に、開発途上国の緊急援助に関しては「大きな革命」が起きるのではないかと思っています。 緊急援助物資をAmazonで注文して直送できればおもしろい インターネットの普及によって、オンラインで買い物を済ませることが多くなりました。その中でもAmazonは世界最大手で、誰もが一度は生活用品を注文したことがあるのではないでしょうか。ところで、開発途上国に対する援助のアプローチには大きく2つあります。人道支援と開発援助です。この内、人道支援は災害や紛争の影響で避難生活を余儀なくされる人々へ一時的かつ迅速に行われるものです。そのため、「物流(ロジスティックス)が命」の分野です。今回の話とどこに接点があるのか?あらゆる生活必需品を世界各地で在庫管理しているAmazonが物流を自社で管理すること。緊急援助でAmazonと援助機関が連携できれば、潜在的な可能性は計り知れないものがあると思います。 日本の緊急援助はこうなっている 日本の緊急援助はJICAが担っています。JICAの緊急援助物資は、決められた物資リストに基づいて、世界各国の備蓄倉庫に常備されています。世界食糧計画(WFP)の倉庫を間借りしている場合もありますが、シンガポール、マイアミ、ドバイ、アクラ、マジュロ(マーシャル)、マルキョク(パラオ)に保管庫があります。災害が発生すると、現地政府の要請が日本政府に届き、JICAが物資放出の調整を開始します。たとえば、中南米地域で災害が発生した場合、基本的にはマイアミの倉庫から物資を届けることになります。その際、JICAは自社の貨物機を保有していないため、民間機をアレンジすることとなります。チャーター便をアレンジすると思われている方も多いようですが、基本的には通常運航している民間の通常便に物資を載せることになります。ここにある課題は何か?物資供給元、倉庫管理会社、民間航空会社など複数の会社が介在し、緊急援助は成り立っていることです。迅速性最優先させる必要がある分野では、関係者が増えれば増えるほど事務コストと時間がかかります。 [...]

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開発途上国のインフォーマルセクター・経済・雇用に関する用語解説

3月 4th, 2019|0 Comments

Sunday, 30 April 2017 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertist インフォーマルセクターからインフォーマル経済・インフォーマル雇用の時代へ 開発途上国の貧困と開発に関する議論において、持続可能な開発目標(SDGs)が採択された意味は極めて大きい。特に、貧困撲滅を2030年までに達成すことが最優先課題(SDG 1)として掲げられた意味は重い。スローガンである「誰も置き去りにしない(No-one left behind)」をスローガンに終わらせないための具体的な取り組みが求められている。 こうした新時代の貧困と開発に関する議論で一躍脚光を浴びているのが、非公式経済(インフォーマル経済)から公式経済(フォーマル経済)への移行である(SDG [...]

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途上国の国際緊急援助物資供与はこう変わる?一問一答

10月 11th, 2016|0 Comments

Tuesday, 11 October 2016 by Ippei Tsuruga Original article: The Povertist先日の記事で、災害時の緊急援助物資供与についてAmazonとJICAが連携すると面白いのでは、と書いたところ各方面からポジティブ・ネガティブ両方の反響がありました。ネガティブなコメントについては、言葉足らずの部分があって誤解されているものもありましたので、この機会に少し補足したいと思います。ここでは、まず前回の記事で伝え切れなかった部分を補足し、誤解を解消したいと思います。その上で、緊急援助の今後のビジョンについて考えてみたいと思います。関連記事 途上国の災害緊急援助をAmazonで注文・配送したらどうなるか?(2016年8月18日掲載)Amazonに委託することで日本が自社倉庫で物資管理することのメリットがなくなるのでは?まず、「日本が自社倉庫を世界中に保有している」というのは誤解です。日本の緊急援助を担っているのはJICAですが、私が知る限り、JICAは緊急援助物資の備蓄倉庫は保有していません。こちらの入札公示を見ると、緊急援助物資の備蓄と緊急輸送業務を外部委託しています。また、外務省が公表している「緊急事態における人道支援の評価(第三者評価)」でフィリピンのケースが紹介されていますが、備蓄倉庫から現地への輸送を運送会社が行ったと記載されています。つまり、委託業者が備蓄倉庫の管理をし、緊急援助物資の現地までの輸送も行っているのが現状といえます。Amazonがこの競争に参加することで何が変わるか?日本国内の輸送業者だと、日本通運やヤマト運輸が思いつくでしょう。国外に目を向けると、FEDEX、DHL、UPSといった全世界で国際輸送業務を行っている大手企業があります。これらの輸送業者は自社倉庫・貨物便を多数保有しており、緊急援助物資供与の世界でも競争力があるのではないかと思います。ただ、実際にどの程度受注しているのかは公表されていないのでわかりません。これが世界の物流業界の構図だとすれば、Amazonが加わることで何が変わるのでしょうか。Amazonの強みは、物資のサプライヤーでもあることです。上記の輸送業者は、物資を備蓄し、現地まで輸送することはできますが、物資を調達することはできません。JICAの上記の入札公示を見てもわかるとおり、備蓄・輸送に関してのみの委託となっています。つまり、物資調達は別途サプライヤーと契約しなければならないのが現状かと思います。Amazonがこの競争に参加することで新たな可能性が生まれるのは、物資調達から現地輸送までを一社で完結できるという点でしょう。事務的に業務実施契約が一本で済むだけでなく、検品業務、通関業務、業者間の引継ぎなどのプロセスが簡素化されるので、迅速性の求められるオペレーションに多くのメリットがあると思われます。人道的な緊急援助へ市場競争原理を入れるのは良くないのではないか?このようなコメントも頂きました。頂いたコメントの意図を汲み取ると、「市場競争が進むと大企業のみが生き残り、人道支援というニッチな分野が魅力的でなくなったときにその大企業も撤退してしまうリスクがある」という指摘でした。たしかに一理ありますが、それでも「すべて国営で実施すべし」と言うのは、税財源が厳しい実情を踏まえれば非現実的だと思います。緊急援助物資の供与額は、一回当たり数百万円から数千万円程度です。備蓄倉庫管理・輸送業務専用の公務員を雇用し、政府専用機を世界各地に配置し、緊急援助を行うことは割に合わないと思います。限られた予算の中で運用するには、ある程度は専門の業者へ外部委託することが望ましいでしょう。こうした効率性も踏まえて、上記のとおり備蓄・輸送業務は外部委託し、業者は一般競争入札を経て選定されているのだと思います。Amazon参入へ課題は無いのか?直感的にですが、そもそもAmazonが緊急援助への参入を考えているとは思えません。ただ、「参入すれば緊急援助の物流にとって良い影響があるだろう」という思いで、先日の記事を書きました。検討すべき課題は2つあると思います。まず、日本の緊急援助に関して言えば、最大の課題は言語の問題だと思います。これはAmazonだけでなくFEDEXなどもそうですが、国際輸送業務(ましてや緊急援助)で日本の官公庁と仕事をした経験があまり無いと思います。業務フローの見直しや、英語での業務遂行が可能な環境・体制をまずは日本側で用意する必要がありそうです。次に、日本の緊急援助物資はあらかじめ決められた物資リスト(スペック)に基づいて調達する必要があります。そして、物資には日本のODAマークを張る必要があります。こうした業務は、Amazonにとって煩雑かつ本業以外の追加業務となるため、Amazonにとってあまり利益の見込めない煩雑な案件なのではないかという気がしています。アメリカやイギリスがどのような業者と契約し、このあたりの煩雑な業務をどう整理しているのかが気になります。もう一歩進んだアイデアとして、個人対個人の緊急支援東日本大震災の際、Amazon Japanの「欲しい物リスト」へ被災者が必要物資を掲載し、全国からオンラインで支援が集まった事例がありました。国際緊急援助の舞台でも同様の仕組みが展開されれば、大きな一歩になると思います。ただ、ここで言う「大きな一歩」というのは、国際緊急援助業務をAmazonが「代替」するということではありません。むしろ、東日本大震災の「欲しい物リスト」のように、個人対個人の支援の可能性が開かれることに意味があるのだと思います。盛り上がる妄想に水を差すとすれば、この試みにはいくつもの課題も認められます。まず、Amazonが自社便で現地まで空輸したとしても現地の交通状況が麻痺していれば、現地輸送ができないため物資は空港で止まってしまいます。政府間の緊急援助の場合、現地政府との調整で国内輸送をどうするかが決められます。個人による支援を誰が取りまとめ、現地輸送を確保するのか。整理する必要がありそうです。また、もう一つの課題は、「メジャーな国や目立つ災害」にしか世界の関心は向かないということです。日本が緊急援助を展開している案件でさえ、多くの国民が知らないものが多数あると思います。個人対個人の支援が、現行の公的機関による緊急支援を代替できない理由の一つです。さて、いかがでしたでしょうか。新しい流れができるとき、課題は山のようにあります。Amazonが緊急援助へ参入することは現実的ではないと思いながらも、こうしたシミュレーションを通じて新しいアイデアが生まれるのかもしれません。開発援助に占める民間部門の役割が拡大する中、緊急援助のあり方も新しい流れができる日も遠くない気がしています。 Affiliated by THE POVERTIST

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